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隣接地を纏めて売却~限定価格実践編~

 不動産は分筆・合筆できます。合筆とは、複数の土地(筆)を合併し、一体地にすることです。分筆とは、合筆とは逆に、土地(筆)を分割することです。

 ここでご相談を受けた事例をご紹介します。

 当初、地方にお住まいの方から、杉並区所在の相続財産である商業地の売却のご相談を受けて、まずは価格調査を行うこととなりました。対象地は約20坪で指定容積率は500%、前面道路約6mのため実際に使用できる基準容積率は約360%(≒前面道路幅6m×商業地の係数0.6)、建蔽率は防火地域のため100%、その他に日影規制はありません。商業地の価格は収益性が重視されますが、収益性を判断するためには、対象地上にどのような建物が建築出来るかをプランニングする必要があります。ざっくり言うと、この想定建物の販売価格を求めて、建物価格および販売利益、金利等を控除して収益価格を求めます。一方で、土地取引事例を収集し、地域の相場を把握して、いわゆる比準価格を求めます。この両者を関連付けて、土地価格を決定する訳ですが、現実の市場では、不動産の個別性や稀少性に着目されて、鑑定価格よりも高値で取引されるケースが散見されます。

 本件では、売却活動の中で隣接地所有者から売却の意向を確認することができたため、この2区画の土地を一体地として売却する運びとなりました。実は、それぞれの土地を売却するよりも、一体地として売却する方が土地単価が上昇するケースがあります。なぜならば、土地を集約して規模が纏まった方が、エレベータや廊下、階段などの共用部面積の割合が小さくなり、効率的な計画が可能となるためです。このとき、一体地の価格は、2つの土地それぞれの価格の合計よりも大きくなり、土地の集約により乖離(増分価値)が生じる場合があるのです。不動産鑑定評価基準では、この増分価値を含む価格のことを限定価格と呼び、つぎのように定義しています。

 「限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産 との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場 概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相 対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正 に表示する価格をいう。 限定価格を求める場合を例示すれば、次のとおりである。 (1)借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合 (2)隣接不動産の併合を目的とする売買に関連する場合 (3)経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買に関連する場合」

 本件はまさに(2)隣接不動産の併合を目的とする売買に関連する場合に当たります。

 余談ですが、対象地と隣接地(併合された土地)はいずれも古家が建っていました。杉並区では、ある一定の区域(木造建物密集地域など)で建物解体費用に対して、一定額を助成する制度があります。

 当社では、不動産の鑑定評価を通して、適正な売却価格をお伝えし、御依頼によっては売却までお手伝いが出来ます。また、単純に売却するだけではなく、建築やコンサルティングのノウハウ、助成金などを活用して、資産価値の最大化を図ります。